雨の日に欠かせない傘。コンビニでパッと買えるビニール傘からブランド物の高級傘まで多種多様な「洋傘」が売られていますが、日本独自の「和傘」には、洋傘にはない風情と魅力があります。日本的なものが見直されるなか、優美な蛇の目傘などの和傘も憧れの品ではないでしょうか。
■和傘の歴史
和傘のルーツは、平安時代頃に、中国から伝来した「天蓋(てんがい)」だといわれています。これは、身分の高い人に対して、日除けや魔除けのために差しかけるもので、実用というよりは権威の象徴でした。
その後、室町~安土桃山時代の頃には、開閉ができる工夫がなされ、また、和紙に油を塗って防水効果を持たせた雨用の傘として、今の和傘の原型ができあがったようです。
和傘が一般的に使われるようになったのは江戸中期頃。日常で使うだけでなく、歌舞伎や舞踊などにも取り入れられました。浮世絵の中にも和傘が描かれており、身近なものになったことがうかがえます。
■和傘の特徴と種類
和傘の大きな特徴は、なんといってもその素材が和紙・竹・木などの自然のものであること。洋傘にはない和傘ならではの風情があります。骨の数が洋傘は通常8本なのに比べて和傘は30~70本ととても多く、開くと傘の部分はまっすぐに広がり、畳むと洋傘のように生地を巻くことなくすっきりまとまります。
和傘の種類には、「蛇の目傘」「番傘」「日傘」「舞傘」などがありますが、雨具として実用的なのは「蛇の目傘」と「番傘」です。
・蛇の目傘
蛇の目傘は、竹で作られた骨組みの中心部と縁まわりに青土佐紙、その中間に白紙を張り、開くと蛇の目模様になることから「蛇の目傘」と呼ばれるようになりました。青土佐紙のほかにも、渋にべんがらを混ぜて塗った「渋蛇の目」、縁まわりだけを黒く塗った「奴蛇の目」などがあります。内側の骨の部分には飾り糸を施してあり、傘の内側も美しく楽しめます。今は様々な柄をあしらったものもあり、その美しさで装飾用としても人気があります。
・番傘
番傘は、竹と和紙からできた骨太で丈夫な作りの和傘です。商店の貸出用の傘として利用するため、紛失を防ぐために屋号や家紋、番号をつけたので「番傘」といわれます。普段用の実用傘として普及しました。
■和傘の産地
岐阜県は和傘の産地として有名です。江戸時代から、材料となる真竹と上質な美濃和紙、えごま油が入手しやすかったことと、当時の加納藩主が下級武士の内職として傘づくりを推奨したことなどから地場産業として発展してきた歴史があります。
和傘作りは、製造工程が細かく分業化されています。1本の竹から数十本の傘骨を作る骨師、シワなく紙を貼る張り師、油と漆を塗る仕上げ師など熟練した職人たちの手によって仕上げられます。近年は和傘の需要が減少したことから生産量や製造者は減ってしまいましたが、現在も岐阜の郷土工芸品となっています。最近は、蛇の目模様にこだわらず現代的なデザインの蛇の目傘などもあり、注目されています。
2019年06月07日