最近の浴衣人気で、浴衣姿の女性を見る機会が増えました。色柄も古典的なものから今風のものまで種類が豊富で、皆さん自分の好みに合わせて楽しんでいるようです。浴衣姿の足元を見ると、中にはおしゃれなサンダルの方もいますが、基本は素足に下駄。特に伝統的な色柄の浴衣を粋に着こなすときには、やはり足元も粋に決めたいもの。下駄にはどんな種類があるのでしょうか。足が痛くならない履き方もご紹介します。
■下駄の作り
下駄を知らない方はいないと思いますが、下駄を構成している部分の名称を知らない方は多いのではないでしょうか?足をのせる部分は「台」、足を入れる部分は「鼻緒」、鼻緒と台をつなぐ部分を「前つぼ」といいます。鼻緒をつけるために台に開けた穴は「眼」といいます。これらは、草履も同じです。
ひっくり返すと下駄には「歯」がついています。この形状によって下駄の種類や名称が変わります。裏面の前つぼの結び目を隠すために「前金(まえがね)」がついているものもあります。雨の日用には「爪皮(つまかわ)」というつま先に被せるカバーもあります。
台の素材は木で、主に桐が使われおり、特に「会津桐」は柾目が美しいといわれます。
素材そのままの白木の他、艶やかな塗りのもの、焼いて木目を際立たせたもの(焼き木目)、鎌倉彫などの彫りの装飾を施したものなど、さまざまな下駄があります。
■下駄の種類
・駒下駄(こまげた) 二枚の歯がある代表的な形の下駄。一見歩きにくそうに見えて意外と安定感があり、軽くて歩くとカラコロとよい音がします。
男性用には、幅や形によって「大角(おおかく)」「大下方(おおげほう)」「真角(まっかく)」などの種類があります。
女性用の「芳町(よしちょう)」はスタンダードな形。もともと日本橋芳町の芸者さんが好んだことからこう呼ばれるそうです。
・千両下駄(せんりょうげた)
二枚歯で前歯が斜めに切り出されていて、重心が前のめりなので「のめり」とも呼ばれます。名前の由来は、横から見ると千の文字に見えるからとも、千両役者が好んではいたからともいわれています。
・後丸下駄(あとまるげた)
前の歯が斜めになっていて千両下駄に似ていますが、後ろの歯もかかとまであり、安定しています。後付けの歯と違い、歯の間の部分はくり抜いて作られています。若い女性がよく履いたので「小町下駄」とも呼ばれます。
・日和下駄(ひよりげた)
細く薄い台と二枚歯が特徴です。歯が細く雨水が跳ねにくいので、爪皮をつけて雨下駄としてよく使われます。
・舟形下駄(ふながたげた)
草履に近い小判型で、歯がなく平らな形状です。草履型なので足袋を履いてもOK。カジュアルな草履感覚で履けます。
・右近下駄(うこんげた)
近年人気の、台にカーブがついている小判型の下駄です。舟形下駄の底をくりぬいたような形状で、裏面がウレタン張りになっているものがほとんどです。履き心地はサンダルに近く初心者でも安心して履けます。カランコロンと下駄特有の音はしませんが、マンションなど音が響くと困るところでは重宝。
・ぽっくり(関西ではこっぽり)
高さのある下駄で、台の底がくりぬかれています。舞妓さんや子供用の履物として使用。蒔絵など豪華な装飾が施されたものもあります。
■下駄の選び方と履き方
たくさんある下駄の中から自分に合った下駄を選びたいもの。まず、サイズですが、履いた時にかかとが1cmほど台からはみ出すのが粋とされています。鼻緒が細いと足に食い込んで痛くなる場合があるので、初心者なら太めのやわらかい足当たりのよい鼻緒を選ぶのがおすすめです。
履き方は、鼻緒の奥まで指を突っ込まず、前つぼと指の股の間に指1本入るくらいの隙間を作ります。こうすることで、指の股が直接擦れるのを防ぎ、また、かかとが1~2cm外に出た格好になり鼻緒部分に体重がかかりにくくなり、足が痛くなるのを予防できます。履く前に鼻緒を引っ張ったり揉んだりして履きやすくしておくことも、足を痛めないコツです。また、下駄屋さんなどで、好みの台に好みの鼻緒を自分の足に合うようにすげてもらい、自分だけのオリジナル下駄を手に入れるという楽しみ方もあります。
下駄は夏しか履いてはいけないというものではありませんが、靴が定着している現代では、下駄は涼しげな夏のおしゃれの一つでしょう。浴衣姿を引き立てるだけでなく、普段履きにしてみてもいいかもしれませんね。