風に揺れて「ちりん、ちりん」と涼やかな音色を奏でる「風鈴」は、夏の風物詩。風鈴の音色を聞くと、ふと涼を感じるものです。風鈴市も各地で開催されます。暑い時期ですが、お気に入りの風鈴を軒先や室内の風の通り道につるして、爽やかに過ごすのも良いものです。
■風鈴のルーツ
風鈴のルーツは、仏教伝来とともにもたらされた「風鐸(ふうたく)」です。風鐸は、今の風鈴とは全く違う重い音色で、邪気を遠ざける魔除けの鐘としてつるされるものです。今でもお寺の軒先などに見ることができます。
風鈴がいつから日本の夏の風物詩になったのかははっきりしませんが、江戸時代の浮世絵には、浴衣を着て涼んでいる美人とともに今と同じ形の風鈴が描かれています。
青銅製が中心だった風鈴ですが、江戸時代に入ると、ガラス作りの技術がもたらされ、ガラス製の江戸風鈴が作られるようになりました。江戸の町にはたくさんの物売りがいて、売り声も高くにぎやかに売り歩いていましたが、「風鈴売り」だけは、風鈴の音色がよく聞こえるように声を上げずに売り歩いていたといわれます。
■日本各地にあるご当地風鈴
【江戸風鈴】
色鮮やかな絵付けが楽しめる、ガラス製の江戸工芸品。
【南部風鈴】
岩手工芸品。南部鉄器が奏でる澄んだ音色が特徴。
【越前焼風鈴】
福井工芸品。風情を感じさせる高い音色が特徴。
【備前焼風鈴】
岡山工芸品。日本六古窯の備前焼の深く心地よい音色です。
【駿河竹千筋細工風鈴】
静岡工芸品。通常の竹細工と違い、とても繊細な作りです。
【琉球ガラス風鈴】
沖縄工芸品。色鮮やかな気泡が織りなす琉球ガラス製です。
■江戸風鈴の音の秘密
ガラス製の江戸風鈴の作り方を見てみると、音を鳴らすための工夫がありました。
「宙吹き」という、型を使わずにガラスに息を吹き込んで膨らませる手法でガラス球を作り、ガラス玉の口の部分を切り落として刃物で削りますが、この時、切り口を全部なめらかにするのではなく、ギザギザの部分をあえて残します。ギザギザの部分を残すことで、中のふり管が揺れてガラスの縁にさわった時、こすれて音がするのです。この部分がつるつるだと、触っただけでは音はしないそうです。
■風鈴列車
毎年夏季限定で、車両内につるした風鈴が涼やかな音色を奏でる「風鈴列車」を運行している鉄道が各地にあり、津軽鉄道、智頭急行、能勢電鉄、上毛電気鉄道などが広く知られています。駅構内や待合室にその土地特有の風鈴をつるす電鉄会社も多く、乗客にひと時の涼をもたらしてくれます。
■風鈴市
また、全国各地で風鈴市も開催されます。
川崎大師の風鈴市は関東では夏の風物詩として親しまれており、毎年大勢の人で賑わいます。オリジナル「厄除だるま風鈴」をはじめ、全国各地の風鈴900種類、30,000個の風鈴が勢揃いします。素材も金属、陶磁器、ガラスや石など様々あり、珍しい風鈴もいろいろ。お気に入りの風鈴を探してみるのも楽しいですね。
2018年06月04日