9月の和風月名は「長月(ながつき)」。旧暦の9月は、新暦の10月から11月の上旬にあたり、夜がだんだんと長くなる「夜長月(よながづき)」が略されて「長月」となったといわれています。秋雨が多く降る時季なので「長雨月(ながめつき)」、稲穂が伸びて実るので「穂長月(ほながづき)」が略されたとする説や、「稲熟月(いなあがりづき)」がなまったという説もあります。
さて、今日は雑節の「二百十日(にひゃくとおか)」。昔から、立春から数えて210日目を「二百十日」といい、秋の収穫を目前にして台風の襲来を警戒し、過去の経験から油断のならないこの日を厄日として戒めたのです。「二百二十日(にひゃくはつか)」(2023年は9月11日)も同様の雑節で、「二百十日」、「二百二十日」、旧暦8月1日の「八朔(はっさく)」(2023年は9月15日)は農家の三大厄日といわれます。
また、この時期、収穫を間近に控えた大切な農作物が風水害などにあわないよう、各地で風を鎮めるための祈りを込めた祭りが行われます。なかでも、9月1日から3日まで行われる富山県富山市八尾町の「おわら風の盆」は、300年の伝統をもつといわれる代表的な風鎮めの祭りです。坂の町・八尾の古い街並みにぼんぼりの灯がともり、哀愁をおびた胡弓の音色が響いて、「越中おわら節」にのせて編み笠を被った男女が踊り歩く姿は幻想的。独特の風情が人気を呼び、小説や歌にも数多く登場しています。
また、9月1日は「防災の日」です。1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなみ1960年(昭和35年)に「防災の日」が制定されました。非常持ち出し袋の点検や、家族との連絡方法、避難所、避難経路、家族との待ち合わせ場所など、万が一に備えてぜひ確認しておきましょう。
9月3日から七十二候では「禾乃登(こくものすなわちみのる)」に入ります。「禾(のぎ)」は稲穂が実ったところを表す象形文字で、稲などの穂先に生えている毛のことを指し、そこから穀物の総称となりました。いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃です。
この夏は線状降水帯が多発しました。大雨による被害に遭った田んぼや畑も多いと思われます。実りの秋を目前に、これ以上、災害に見舞われず、無事収穫できることを心より願っています。
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【季節のめぐりと暦】雑節
【季節のめぐりと暦】七十二候
【暮らしのまつり・遊び】秋/おわら風の盆