12月17日から七十二候の「鱖魚群(さけのうおむらがる)」。鮭が群がって川を上る頃という意味です。海で育った鮭は、冬になると産卵のため生まれ故郷の川に戻り、上流を目指し群れを成して遡上します。鮭の群が流れに逆らい、一気に川を上ろうとする様子には、昔の人々も自然の神秘を感じたに違いありません。
さて、12月も半ばを過ぎると各地で「歳の市」が行われ、正月飾りなどの正月用品、羽子板、だるまなどの縁起物が売られます。
東京・浅草の浅草寺では、毎年12月17日~19日に羽子板市が行われます。18日は観音様の縁日で、納めの観音詣の日でもあり、例年は大勢の人が参詣に訪れます。
羽子板には、羽根をついて遊ぶ羽子板と、飾って楽しむ押し絵羽子板があります。浅草の羽子板市で売られるのは主に押し絵羽子板。江戸後期、魔よけを目的とした装飾用の「押し絵羽子板」が登場し、役者絵の羽子板が人気を集めました。役者絵の描かれた羽子板は、いまでいうと人気スターのポスターやグッズのようなものだったかもしれません。
近年は、その年に話題になった人物を取り上げた「変わり羽子板」などもあります。今年も、大リーガーの大谷選手や将棋の藤井聡太名人など、2023年に大活躍した有名人の羽子板が作られているそうです。
ところで、年の瀬に羽子板市が立ったり、正月に羽根つきをしたりするのはどうしてでしょうか。実は、羽根つきは単なる遊び、玩具としてだけでなく、厄払いの意味を持っています。羽根についているムクロジの実は、「無患子」と書くことから子どもが患わない(病気にならない)とされ、羽根を、病気を運ぶ蚊の天敵であるトンボに見立て、1年の厄を払いのけるとされました。羽根を打ち損じると顔に墨を塗るというのも、魔よけのおまじないなのです。
江戸時代には、女の子の健やかな成長を祈って、初正月に羽子板を贈るようになりました。現代でも、男の子が生まれた家には破魔弓、女の子が生まれた家には羽子板を贈るという習慣があります。
【季節のめぐりと暦】七十二候
【暮らしを彩る年中行事】お正月
【暮らしの中の歳時記】羽根つきと羽子板
2023年12月17日