春の七草は1月7日の人日(じんじつ)の節供に七草粥にして食べることで有名ですが、秋にも七草があります。しかし秋の七草は、これにちなんだ節供や行事があるわけではなく、鑑賞して秋の風情を楽しむものです。
■秋の七草プロフィール
【萩】(ハギ)
「萩」とは「秋に咲く草」という意味。お彼岸のおはぎは、この萩に由来します。
【桔梗】(キキョウ)
花期は夏なので、夏の着物によく描かれています。根は太く、喉に効く生薬になります。
【葛】(クズ)
茎で籠や布を織り、根から採取したでんぷんがくず粉となります。くず粉で作ったのがくず餅。漢方薬の葛根(かっこん)は根を乾燥させたものです。
【藤袴】(フジバカマ)
乾燥させると香りが強く、桜餅のような香りがする。貴族たちは湯に入れたり、衣服や髪につけていたとか。別名「蘭草」「香水蘭」。
【女郎花】(オミナエシ)
恋に破れて身投げした女の脱ぎ捨てた山吹色の衣が、この黄色い花になったといいます。全体に大きく白い花が咲くのは「男郎花(オトコエシ)」。二つの自然交配種は淡い黄色で「オトコオミナエシ」といいます。
【尾花】(オバナ)
ススキのこと。草が茂っている様子が「薄(ススキ)」で、穂が出た状態は動物の尾に見立てて「尾花」といいます。ススキは「茅(カヤ)」ともいい、これで葺いた屋根が「茅葺屋根(かやぶきやね)」です。
【撫子】(ナデシコ)
愛児を失った親が、その子の愛した花を形見として撫でたことに由来し、別名「片身花」といいます。日本女性の代名詞「大和撫子」はこの花からきています。
■秋の七草の由来
一般的には、万葉の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が二首の歌に詠んだことから、日本の秋を代表する草花として親しまれるようになったとされています。
『秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花』
(山上憶良 万葉集 一五三七 巻八)
『萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花』
(山上憶良 万葉集 一五三八 巻八)
「朝貌の花」は、「朝顔」「木槿(ムクゲ)」「桔梗」「昼顔」など諸説ありますが、一般的には「桔梗」を指すとするのが有力です。
■秋の七草の覚え方
★五・七・五・七・七のリズムで
五・七・五・七・七のリズムに合わせて口ずさむと覚えやすくなるもの。山上憶良の歌をそのまま諳んじ覚えても良いのですが、ちょっと口ずさみにくいですね。
覚えやすい組み合わせ方は様々ですが、一番多いのが次の順番です。
ハギ・キキョウ / クズ・フジバカマ / オミナエシ / オバナ・ナデシコ / 秋の七草
これを繰り返し口ずさんでいれば、自然にマスターしてしまいます。
・ 春の七草の覚え方
春の七草も、五・七・五・七・七のリズムに合わせて覚えます。
「セリ・ナズナ / ゴギョウ・ハコベラ / ホトケノザ / スズナ・スズシロ / 春の七草」
これは、『芹なずな御形(ごぎょう)はこべら仏の座 すずなすずしろこれぞ七草』という四辻左大臣の歌になぞらえたものです。
※詳しくはこちらをご覧ください。→ 人日(じんじつ):1月7日 七草の節句
★語呂合わせで
七草の頭文字を並べて、何か意味のある文章を作ります。語呂合わせを自分なりに考えてみるのも楽しいもの。インパクトが強い文章なら、より忘れにくいでしょう。
例えば......
「ハスキーなおふくろ」
=ハ ギ/ス スキ/キ キョウ/ナ デシコ/オ ミナエシ/フ ジバカマ/ク ズ
「お好きな服は?」
=オ ミナエシ/ス スキ/キ キョウ/ナ デシコ/フ ジバカマ/ク ズ/ハ ギ
「フナオ君は好き?」
=フ ジバカマ/ナ デシコ/オ ミナエシ/ク ズ/ハ ギ/ス スキ/キ キョウ
まずは五・七・五・七・七 バージョンで七草に親しみ、頭文字の語呂合わせバージョンで覚えるという合わせ技が効果的かもしれません。
こちらも合わせてご覧ください。
【暮らしを彩る年中行事】五節供/人日