水仙は、花の少ない冬に可憐な花を咲かせ、香りもよく、日本人に古くから親しまれています。水仙には多くの種類がありますが、日本では水仙といえば「ニホンスイセン」を指すことが多いです。庭植えや切り花などにするほか、日本各地に群生地があり、私たちの目を楽しませてくれます。
■寒さに負けず咲く水仙
水仙の原産は地中海沿岸からアフリカ北部で、色や形の異なる様々な園芸品種があります。日本には平安末期または室町時代頃にシルクロードを通り、中国を経由して渡来したとされています。水仙の名前の由来は、「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典から「水仙」となったといわれています。
日本では単に水仙というと、古来より日本で野生化している「ニホンスイセン」を指すことが多く、庭植えや切り花などでよく目にすることができますし、各地に群生の名所もあります。地域によって違いますが、12月から2月が開花時期で、寒い季節に雪の中でも健気に咲くので「雪中花(せっちゅうか)」とも呼ばれます。1月の花にもなっており、春の訪れを告げる花として、正月の飾りに使われることも多いですね。
■水仙の群生地
水仙は観賞用に全国で栽培されるほか、 日本各地に群生地があります。
日本水仙三大群生地といわれているのは千葉県鋸南町、福井県の越前海岸付近、兵庫県淡路島です。
・「江月水仙ロード」と「をくづれ水仙郷」(千葉県鋸南町)
「江月水仙ロード」は、町道の両側に3kmにわたって水仙が咲き乱れ、人気のハイキングコースになっています。「をくづれ水仙郷」は、山間部に位置し、山の斜面を利用した水仙の栽培地で、2.2kmほどの間を水仙が咲きみだれます。房州の花づくりは、江戸時代安政年間に保田地区で咲く日本水仙が元名水仙(もとなすいせん)と呼ばれ、船で江戸に運ばれたのが始まりといわれています。
・越前水仙(福井県越前海岸付近)
越前海岸は日本最大の水仙の群生地です。満開の時期には斜面一面に白い可憐な花の絨毯が広がります。越前海岸の水仙は「越前水仙」のブランド名で知られています。付近には、水仙ランドなど水仙を楽しめる施設が多数あり、特に越前海岸の山沿いの梨子ヶ平付近の段々畑は見ごたえがあります。
・「灘黒岩水仙郷」(兵庫県淡路島)
灘黒岩水仙郷は、江戸時代に付近の漁民が海岸に漂着した球根を山に植えたのが始まりで、徐々に増えていきました。諭鶴羽山から海に続く急斜面一帯に、500万本もの野生の水仙が咲き壮観です。
■水仙を間違って食べないで!
水仙は、可憐なその姿からは思いもよりませんが、実は毒のある植物です。特に葉や球根は毒性が強く、食べると悪心、嘔吐、下痢などの食中毒症状を起こしたり、触ることで皮膚炎になったりすることがあります。葉がニラやノビルに、球根が玉ねぎに似ているので間違って食べてしまう例がよくあるそうですから、気をつけてくださいね。
2018年11月15日