青い小さな花をつける「露草(つゆくさ)」は、庭先や道端などにも咲く身近な夏の花です。6月頃から9月頃までが開花期で、時に群生するほど繁殖力が強い露草ですが、ひとつひとつの花は半日でしぼんでしまいます。そのはかなげな姿に古くから愛されてきた野の花です。
■露草ってどんな花
露草は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生の植物で、日本中に自生しています。地面を這うほふく性で繁殖力が強く、よく茂ります。花弁は3枚ですが目立つのは上の2枚で、大きく特徴的な青色をしています。もう1枚は花の下の方についていて、白色で小さく目立ちません。
近縁種には、花が紫色の「ウスイロツユクサ」や、紫の花弁が3枚の「ムラサキツユクサ」、白い花弁の「トキワツユクサ」などがあります。
■万葉の時代から愛された野の花
露草の花は、朝咲いて昼にはしぼんでしまいます。この朝露のようにはかない様子が「露草」という名前の由来という説があります。
また、古くは「つきくさ」と呼ばれており、まだ暗いうちから月光を浴びて咲くので「月草」、花の青い色が衣などに付着しやすいので「着き草」、花を搗いて染料にしたので「搗き草」などと書きました。この「つきくさ」が転じて「露草」になったという説もあります。「万葉集」などの和歌集では「月草」の表記が多く残っており、古くから親しまれていた花だったことがわかります。
さらに、花の形から「蛍草(ほたるぐさ)」「帽子花(ぼうしばな)」、花の色から「青花(あおばな)」などの別名があります。
■露草の青色のヒミツ
「着き草」といわれるように露草の青色は染まりやすいので、古くは「摺染(すりぞめ):草花をそのままか、または草花の汁を取って布に摺りつけて模様を染めること」に使われました。また、水で簡単に落ちるので、現在でも友禅染めや紋染めの下絵を描くのに用いられています。ただし、小さい花では少量の色しかとれなので、染色用には大型の花が咲く栽培種の「オオボウシバナ」(通称:青花)が使われています。
ちなみに、露草の青色は「露草色」という日本の伝統色にもなっています。
■露草は秋の季語
露草の開花期は6月頃から9月頃までですが、和歌では秋の花として詠まれることが多かったので、秋の季語とされています。
露草が日本人に親しまれてきたのは、朝咲いて昼にはしぼむ花の様子や、その美しい青い色を着物に写し取っても時とともに消え去ってしまうような「はかなさ」や「うつろい」が、「侘び」「さび」を好む日本人の心に響いてきたからかもしれません。
2021年06月23日