2018年10月03日

鹿の角きり

「鹿の角きり」は、毎年10月の第2週目の連休ごろに行われる、古都・奈良の秋を彩る勇壮な行事です。発情期をむかえた雄鹿が突き合って死傷したり、人に危害を与えたりするのを防ぐために行われる、人と鹿が共存する奈良ならではの伝統行事です。

pixta_7881418_S奈良牡鹿.jpg


■角きりの歴史
「鹿の角きり」は江戸時代初期の寛文11年(1671年)、奈良奉行が当時、鹿の管理者であった興福寺の許可を得て始めたと伝えられています。
江戸時代には町内の袋小路などで角きりが行われていましたが、明治時代の中頃には、春日大社の参道で行われ、見物席も設置されるようになりました。昭和4年、春日大社境内に鹿の保護施設「鹿苑(ろくえん)」ができ、角きり場も設けられました。現在の角きりもここで行われています。


■鹿の角 豆知識
鹿の角は雄だけに生え、毎年生え変わります。2~3月ごろ、古い角が自然に落ちて、4月ごろから新しい角が生えてきます。新しく生えてくる角は、短い毛の生えた表皮に覆われ、内部に血液が巡っています。この状態を「袋角」といい、1日に約2cmも成長するそうです。秋になると角の成長と血流が止まり、表皮が剥がれ落ち、完成した硬い角になります。完成した角には血管も神経も通っていませんので、切られても痛みはありません。

満1才で初めて生える角は、枝分かれがなく、1本の状態で生えるので「ゴボウ角」と呼ばれています。枝分かれの本数は年を追うごとに増え、枝先4本が最多で、鹿の壮年期である7~10才くらいで大きさが最大になります。10才を越え、老齢になると徐々に長さが短くなり、左右の角が非対称になることもあるそうです。


■角きり行事の流れ
「角きり」は10月中旬の3連休の頃に行われることが多く、3日間続きます。毎日正午に安全祈願を行った後、午後3時まで約30分間隔で5回の角きりが行われます。
まず、法被にはちまき姿の勢子(せこ)と呼ばれる人たちが「赤旗」を持ち、角きり場内に立派な角鹿2~3頭を追い込みます。

pixta_3683165_S鹿の角切り3.jpg

「十字」と呼ばれる捕獲具を逃げ回る鹿に投げて、鹿の角に縄をひっかけます。

pixta_1040339_S鹿の角切り2.jpg

縄をゆっくり手繰り寄せ、数人で鹿を抑え込み、ゴザの上に寝かせます。

pixta_8512303_S鹿の角切り1.jpg
鹿は神様のお使いの「神鹿」とされてきたことから、神官役が鹿の口に水差しで水を飲ませて落ち着かせた後、のこぎりで角を切り落とします。切った角は、神前に供えられます。

pixta_8512311_S鹿の角切り5.jpg

雄鹿にはちょっとかわいそうな気もしますが、人ばかりでなく、鹿の安全のためにも長く続けられてきた歴史ある行事です。愛護活動のひとつとしても大切なことですね。ちなみに角きりの行事で対象にならなかった雄鹿も順次角を切っているそうです。

ページトップへ