酉の市

酉の市とは、関東を中心とした神社で、11月の酉の日の酉の刻(午後5時~7時)頃から開かれる露店市です。大酉祭(おおとりまつり)、お酉様(おとりさま)などともいわれます。熊手や招き猫などの縁起物を買い、一年の無事と来る年の福を願います。
酉の日は12日ごとに回ってくるので、1回目を一の酉、2回目を二の酉といいますが、11月に3回巡ってくる年もあり、三の酉まである年は火事が多いともいわれています。

酉の市イメージ

酉の市の始まり

酉の市の始まりは江戸時代。「春を待つ 事のはじめや 酉の市」と芭蕉の弟子の宝井其角が詠んだように、正月を迎える最初の祭りとされていました。
もともとは、現在の足立区大鷲(おおとり)神社の近くに住む農民が鎮守である「鷲(おおとり)大明神」に感謝した収穫祭で、鷲大明神に鶏を奉納し、集まった鶏は浅草の浅草寺まで運んで観音堂前に放したといわれています。
東京都内では、発祥の地とされる足立区の大鷲神社、台東区の鷲神社が有名ですが、他にも30ヶ所以上の神社で市が立ち、賑やかな年の瀬の風物詩になっています。

名物、縁起熊手

市での名物は縁起熊手で、金銀財宝を詰め込んだ熊手には、かくし絵のように縁起物が盛り込まれています。
長寿=鶴、当たる=矢、立身出世=鯉、福を呼ぶ=七福神、お金が儲かる=打ち出の小づちなど・・・。この熊手で運を「かっ込む」、福を「はき込む」といった江戸っ子らしい洒落の利いた縁起物です。
翌年はさらに大きな招福を願って、年々大きな熊手に換えてゆくのがよいとされています。
毎年買う予定なら、最初は小さめから始めたほうがよいかもしれません。

また、浅草酉の寺、鷲在山(じゅざいさん)長國寺(ちょうこくじ)では、小さな竹の熊手に、たわわに実る稲穂を付けた「かっこめ熊手守り」を、開運招福のお守りとして授与しています。このお守りは、江戸時代から今日まで、酉の寺や各々の神社から市の日に限って授与されています。

縁起熊手イメージ

江戸っ子の粋な買い方

縁起熊手の取引は、値切れば値切るほど縁起がよいので、うんと値切って粋に買いましょう。

値段を聞く → 値切る → さらに値切る → もっと値切る → 商談成立

でも、これは売り手と買い手のやりとりを楽しむもの。値切った値段のまま安く買うのは野暮というもの。最初に聞いた値段で払い、値切ったぶんのお釣りはもらわずご祝儀にする、これが粋だとされています。
こうして、買った(勝った)まけた(負けた)と気風のいいやり取りをすると威勢よく「シャンシャンシャン」と手締めが打たれ、ご祝儀を出したお客はお大尽気分を味わい、ご祝儀を頂戴したお店は儲かった気分となり、周囲の人達も手締めに参加してご機嫌になるのです。そうして買った熊手は、大きな福をかき込むように高々と掲げて持ち帰ります。それがまた、いなせな感じです。

熊手の飾り方

熊手といっても、それで掃除をしてはいけません。この熊手でかき込むのはゴミではなく福。福を取り込みやすいよう、玄関などの入り口に向けて少し高いところに飾るか、神棚に供えてお正月を迎えます。

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