春、道端で黄色い花を咲かせているたんぽぽは、子どもたちにも親しみやすい花。伸びた茎の先に黄色い花が咲いている様子をお絵描きしたり、たんぽぽの綿ぼうしを吹いて綿毛を飛ばして遊んだり、誰でも一度はたんぽぽで遊んだことがあるのではないでしょうか。
そんな身近なたんぽぽの、意外と知らない豆知識をご紹介します。
■たくさんの小花が集まったたんぽぽの花
たんぽぽは、キク科タンポポ属の多年草。原産地はヨーロッパで、北半球の温暖な地域全体に自生しています。日本では、日当たりの良い草地や道端などでよく見られます。
私たちが「たんぽぽの花」といっているのは、実は舌状花(ぜつじょうか)という小花がたくさん集まったもので、頭花(とうか)と呼ばれます。つまり、私たちが花びらだと思っているものは小花なのです。
この小花をよく見ると、先がギザギザしていて、5枚の花びらがくっついていることがわかります。めしべは1本でその周りにおしべが5本ありますが、これもみなくっついていて、下のほうに後で綿毛のパラシュートの傘になる冠毛(かんもう)と種子がついています。このような小花が200個くらい集まって一つのたんぽぽの頭花を作っています。
また、たんぽぽは根元に葉がついています。秋冬の間は、地面にべったりとつくように葉を広げていますが、これは地面の熱で暖まり、さらに光を十分あびて光合成をおこない、冬の寒さや乾燥にも負けず春の開花のために栄養を蓄えているのです。たくましい生命力を感じますね。
■たんぽぽは早寝早起き?
春になると新しい葉が出て、つぼみもどんどん大きくなっていきます。つぼみを包んでいる緑色の部分は総苞片(そうほうへん)で、花の集まりを保護しています。やがて中から黄色い花が顔を出してたんぽぽが咲きはじめます。
朝、あたりが明るくなると外側の花から咲き始め、中心に向かってどんどん咲いていきますが、一度に全部は咲ききりません。夕方になり辺りが暗くなると、たんぽぽはつぼみはじめます。たんぽぽは、光を感じることで開いたりつぼんだりするのです。
次の日、たんぽぽは咲ききっていない舌状花も咲かせて、3日目には咲き終わってしまいます。そして、まだ咲いているほかの花の邪魔にならないように倒れてしまいますが、その間に綿毛が作られるのです。数日後たんぽぽは再び立ち上がり、頭花を開いてあの丸い綿ぼうしの形になります。そして綿毛のパラシュートをつけた種子は、風に飛ばされて旅立っていきます。
■たんぽぽの在来種と外来種
日本のたんぽぽの種類は大きく在来種と外来種に分けられます。
在来種のたんぽぽには、関東地方や中部地方を中心に生息している「カントウタンポポ」や関西地方で咲く「カンサイタンポポ」などがよく知られています。多くの種類は黄色い花を咲かせますが、「シロバナタンポポ」のように花が白い種類もあります。
外来種では「セイヨウタンポポ」と「アカミタンポポ」が有名です。
自然の少ない都市部では、古くから日本にあるたんぽぽが姿を消しつつあるといわれています。例えば在来種のカントウタンポポは、虫たちの受粉が頼りで、うまく綿毛を飛ばしても発芽に適さないところでは根付くことができません。それに対し、セイヨウタンポポは、受粉しなくても種子を作る仕組みがあり、また、厳しい環境でも根を下ろし、花を咲かせるなど、繁殖力が強いのです。
たんぽぽを見かけたら、花の外側の総苞片を見てみましょう。セイヨウタンポポは反り返っていますが、日本に昔からあるたんぽぽは、反り返っていません。
■たんぽぽの名前の由来
「たんぽぽ」という名前はかわいらしいですが、名前の由来にはさまざまな説があります。
① たんぽぽの綿ぼうしの形が、綿を丸めて布などで包んだ「たんぽ」に似ていることから、「たんぽ穂」と名づけられたという説
② たんぽぽの茎を切り取って、両端を細かく裂いて水につけると反り返って鼓のような形になることから、別名「鼓草(つつみぐさ)」と呼ばれ、さらに鼓をたたいたときの「タンポンポン」という音が名前の由来になったという説
③ 昔は田んぼの道に生えていることが多かったので「田菜(たな)」と呼ばれていたが、綿毛の特徴を表す「穂々(ほほ)」がついて「たなほほ」となり「たんぽぽ」になったとする説
どれも身近なものが由来で説得力があるように感じますが、いかがでしょうか。
ちなみに、たんぽぽを漢字で書くと「蒲公英」。これは、たんぽぽ由来の漢方薬を「蒲公英(ほこうえい)」と呼ぶことから、中国名をそのまま和名にあてたものです。
また、英語名の「ダンデライオン(dandelion)」は「ライオンの歯」という意味で、たんぽぽの葉のギザギザをライオンの歯に例えたとされています。
2024年04月08日