初夏の頃は様々な果物が出回り始めます。中でも人気のひとつが「さくらんぼ」。つやつやと赤い実が2粒仲良くつながった姿や、デザートの上にちょこんと乗っているところなど、かわいさ満点の果物です。さくらんぼの豆知識を集めてみました。
■桜の木になるから「さくらんぼ」?
さくらんぼは桜の木になる実ですが、お花見の主役ソメイヨシノなど花を楽しむ品種とは違い、主にセイヨウミザクラ(西洋実桜)など実をつける品種の木になります。セイヨウミザクラはその名の通り、ヨーロッパ原産の実をならせる桜で、日本に入ってきたのは明治時代。白い花が花束のようにまとまって咲いた後、実がなって成長します。「さくらんぼ」という名前は「さくらの坊(子)」に由来するとか。
果樹としての学術用語では「桜桃(おうとう)」と呼ばれ、日本で栽培されている生食用のさくらんぼのほとんどは、「甘果桜桃(かんかおうとう) 」に分類されます。他に酸味の強い加工用の「酸果桜桃(さんかおうとう)」などがあります。
■さくらんぼといえば山形県なのはなぜ?
明治時代にさくらんぼの試験栽培が始まりましたが、日本の気候風土に合わず、なかなかうまくいきませんでした。原因は、霜害(つぼみが枯れる)、梅雨(雨にあたると果皮が割れる)、台風(木が強風で倒れやすい)などといわれています。その中で気候風土が適していたのが山形県でした。高い山に囲まれた盆地で梅雨の季節も降水量が少なく、台風の被害も少ない。そして夏暑くて、雪が多い。これがさくらんぼの栽培に適していたのです。
日本のさくらんぼの生産量では山形県が全体の3/4を占めています。
■さくらんぼの種類と旬
明治時代にヨーロッパから導入されたさくらんぼは「ナポレオン」という品種で、明治・大正・昭和を通して最も多く生産されていました。同じころアメリカから来た品種は早生で、「高砂(たかさご)」と命名されました。
今、一番人気で知名度が高いのは「佐藤錦(さとうにしき)」。大正時代に山形県東根市の佐藤栄助氏が育成した品種で「ナポレオン」と「黄玉」の交雑種といわれています。つやつやと赤く、甘くて酸味もほどよい美味しいさくらんぼです。佐藤錦の旬は6月下旬から7月初旬の2種間前後。旬の時期を逃さず味わいたいですね。
山形県育成の新品種「紅秀峰(べにしゅうほう)」は、佐藤錦より少し遅く、7月上旬頃が旬。果実は大きめで甘みが強い品種です。
この他にもハート形の「南陽(なんよう)」、黄色い実の「月山錦(がっさんにしき)」など様々な品種があります。
■さくらんぼの実が2個くっついているのはなぜ?
さくらんぼは一つの花芽から複数の花が咲き、同じ花芽から咲いた花は軸の根元がくっついています。その花が実になるから、実も複数個くっついています。
一つの花芽の中に入っている花の数は、品種によって違い「佐藤錦」なら、1~3個。甘味の強い「紅秀峰」は3~5個の花が咲きます。でも実際に実になるのは、その中でちゃんと受精したものだけ。全体の2割ほどです。その結果、実が2、3個付いたさくらんぼができるということになります。
■さくらんぼの選び方と保存方法
さくらんぼは追熟しないので、熟しているかをまず色でみます。鮮やかな紅い色で、つやがあり、変色したり傷がついていたりしないものを選びましょう。鮮度が落ちてくると軸の色が茶色くなってくるので、緑色の鮮やかなものを選ぶと良いでしょう。
さくらんぼは収穫後、時間が経つにつれて味が落ちていきます。買ったらすぐに食べましょう。保存する場合は、できるだけ涼しいところで。それでも1~2日ぐらいで食べてしまいましょう。冷蔵庫で冷やし過ぎても実が締まって味が落ちてしまいます。食べる直前に冷やした方が美味しく食べられますよ。