秋が深まり、冷え込みを感じるようになると、食べたくなるもののひとつが「おでん」ではないでしょうか。だし汁の中で大根やこんにゃく、たまご、ちくわなど、様々な種ものをコトコトと煮込み、しっかりと味の染みたおでんはおいしいものですね。一口におでんといっても、地域によって種ものや食べ方などに特徴があります。
■おでんのルーツは?
秋冬に特に人気の「おでん」は、もともとどんな料理だったのでしょう。
おでんのルーツとされているのは、室町時代に流行った「豆腐田楽」といわれています。
長方形に切った豆腐に竹串を打って焼き、みそをつけて食べるもので、この豆腐に竹串を打った形が、田植えのときに豊作を願って踊る「田楽舞」の様子に似ていたので「田楽」と呼ばれるようになりました。その後、宮中などに仕える女房たちが田楽に「お」をつけて略し「おでん」になったといわれています。
江戸時代には、庶民の味として振り売りや屋台の人気メニューとなり、豆腐だけでなく、里芋やなす、こんにゃくや魚など、種類も増えていきました。
今のおでんのように、たっぷりの汁で煮て食べるようになったのは明治時代といわれています。その後、関西に伝わり、みそだれのおでんと区別して「関東煮(かんとだき)」と呼ばれるようになりました。
■日本各地のおいしいおでん
おでんの種ものやだし汁、つけだれ、つけるものなど、地域色豊かなおでんが日本中にたくさんあります。その中のいくつかをご紹介します。
・北海道のおでん(札幌風)
昆布だしのつゆに、北海道ならではの山海の幸がいろいろ入った贅沢なおでん。特徴的な種ものは、しらこやホタテ、マフラーと呼ばれる平たくて長いさつま揚げや、フキなどの野菜。
・東北のおでん
青森は、ホタテ、つぶ貝、たけのこなど山海の幸を煮込み、生姜みそだれをつけて食べます。
秋田は、甘めの煮もの風。地場山菜のニオサクを入れるのが特徴です。
・関東のおでん
かつおだしとしょうゆのおでん汁に、大根や練りものが入ります。練りものでは、はんぺんやつみれ、すじかまぼこなどが欠かせません。また、小麦をこねて作るちくわぶを入れるのが特徴。
・静岡のおでん
牛すじだしの黒いつゆが特徴。名物の黒はんぺんやなると巻、牛すじや豚もつなどを串にさし、煮込みます。だし粉(いわしやかつおの削り節と青のり)をかけて食べます。
・名古屋のみそおでん
種ものでは、焼き豆腐や豚もつ、角麩などが特徴的。八丁味噌や三温糖などで作る甘辛い汁で煮る独特の味わいのおでんです。関東のおでんに赤みそだれをかける場合もあります。
・関西のおでん
大阪の「関東煮(かんとだき)」は、かつおだしとしょうゆのつゆで煮て、種ものに牛すじやたこは欠かせません。大阪といえば、クジラのコロやサエズリが定番の種ものでしたが、今では高級品で手が出ません。
京都は、昆布と淡口しょうゆのつゆで、豆腐、ひろうず、湯葉などの豆腐類や、京野菜を京都らしい上品な味に仕上げるのが特徴。
・松江のおでん
あごだしと鶏だしのミックスで、手羽先やバイ貝、あごちくわ、セリや春菊などを煮込んだおでん。
・高松のおでん
讃岐うどん店には、おでんコーナーがある店舗が多く、白みそとからしなどで作るたれと、赤みそと砂糖などで作るたれをつけて食べます。
・福岡のおでん
合わせだしに牛すじでコクを出したつゆが特徴。種ものは、餃子を魚のすり身で巻いた「餃子巻」や鶏の「手羽先」が博多名物です。
・長崎のおでん
あごだしのつゆに、練りものをたくさん入れた、練りものから出るコクと甘みが特徴のおでん。
・沖縄のおでん
かつおベースに豚足(テビチ)が入るコクのある味。一般的な練りものの他に、ソーセージや青菜が欠かせません。
どれも、地域の食文化に根差し、地産の食材を生かしたおいしそうなおでんばかりですね。このほかにもたくさんご当地おでんがあると思います。皆さんの大好きなおでんはどんなおでんですか?
資料:紀文アカデミー おでん教室「おでんの歴史」「日本のご当地おでん」
https://www.kibun.co.jp/knowledge/oden/index.html
2022年10月23日