秋の味覚の魚といえば秋刀魚です。
脂の乗った秋刀魚は炭火で焼くのが最高です。煙の中から香ばしい香りが立ちのぼります。
漢字では「秋刀魚」と書くサンマ。形も色も刀に似ていて、秋にとれる刀のような魚ということから名づけられたといわれています。
「サンマ」という呼び方については、ふたつの説があり、ひとつは、その形から「細長い魚」を意味する「サマナ(狭真魚)」→「サマ」→「サンマ」と変化したという説。
ふたつめは、大群で泳ぐ習性があるので「大きな群れ」を意味する「サワ(沢)」と「魚」という意味の「マ」がくっついて「サワンマ」→「サンマ」になったという説です。
秋、太平洋で採れた産卵前の秋刀魚は脂がのっていて、塩焼きにぴったり。カボスやスダチ、レモン、ユズなどの搾り汁や、ぽん酢、醤油などをかけ、大根おろしを添えて食べる秋刀魚の塩焼きは、日本の「秋の味覚」の代表ともいえます。
また、お刺身や酢じめ、押し寿司などでもおいしく食べられます。これらは脂の乗り切らない初秋の秋刀魚や、産卵後の晩秋の秋刀魚が向いているそうです。
・身がしまって、背は青黒く、腹は白銀色でキラキラして、境界がくっきりしているもの
・尾を持ち秋刀魚の頭を上に向けた時、体が曲がらずにまっすぐに立つもの
・目が濁っていないもの
などがチェックポイントです。
秋刀魚には血液の流れをよくするといわれるエイコサペンタエン酸が含まれていて、脳梗塞・心筋梗塞などを予防する効果があるとされています。また、ドキサヘキサエン酸も豊富に含まれていて、悪玉コレステロールを減らす作用や脳細胞を活発化される効果もあるとされています。
有名な古典落語「目黒の秋刀魚」。落語会では秋の噺としてよく知られています。
落語「目黒の秋刀魚」
ある日、殿様(松江の城主・松平出羽守といわれている)が急に遠乗りにいくといわれ、目黒に馬を走らせました。お昼になって殿様一同、お腹が空いてきたのですが、急なことだったので、弁当の用意をしていませんでした。
腹ペコの家来が「こんな時には、秋刀魚で一膳茶漬けを食したい」といったのを聞きつけた殿様、「自分もぜひ秋刀魚というものを食してみたい」と所望しました。困った家来は「秋刀魚とは下魚でございますゆえ、お上のお口にはいりますような魚ではございません」といったものの、殿様のお言いつけではしかたがない。
何とか近所の百姓に言って持ってこさせると、これが真黒に焼けた「秋刀魚」。魚といえばお毒見を重ね、すっかり冷えた鯛しか知らなかったお殿様は、脂の乗った焼きたて「秋刀魚」のあまりのおいしさにびっくり!
お城に帰っても、お殿様はあの「秋刀魚」の美味しさが忘れられません。
そんな殿様のためにと、家来が日本橋の河岸から高級秋刀魚を調達しました。
しかし、その秋刀魚は、殿様のお体に障りがあってはいけないと、わざわざ蒸して脂を落とし、小骨を丁寧に抜いて、だしがらのようになったもの。もちろんあの美味しさには到底およぶはずもありません。
殿様は、あまりにまずいので「いずれで求めた秋刀魚だ?」と家来に尋ねました。
「日本橋の河岸でございます。」それを聞いて殿様が一言。
「それはいかん。秋刀魚は目黒に限る。」
殿様が、海と無縁な場所である目黒でとれた魚の方が美味しいと信じこみ、断言するくだりが落ちです。世俗に無知な殿様を風刺する話でもありますね。
この言い伝えを現在でも受け継いで、9月半ばに目黒では「さんま祭り」が開かれます。