「ゆり根」はその名の通り、ゆりの球根です。出回り時期は秋から冬。加熱するとホクホクと甘く、ほろ苦い風味が特徴で、茶碗蒸しなどの和食によく用いられます。和食だけでなく、中華風や洋風の炒め物や揚げ物にしてもおいしく、意外と使い勝手が良い野菜です。
■ゆり根の生産地は?
ゆり根を食用としているのは、日本と中国ぐらいといわれています。中国では、ゆり根を古くから滋養強壮、鎮静作用などがあるとして薬膳の材料などに用いてきました。日本では江戸時代に食用の記録があります。
昔は全国で栽培されていましたが、現在は生産量の9割以上が北海道産です。
ゆり根は収穫までに6年程度かかります。連作もできないため、最低でも7年間隔をあけないと再びゆり根を植えることができないといいます。また、涼しくて湿度の低い気候が栽培に適しているので、広大な農地と冷涼な気候の北海道が一大産地となりました。現在主流となっている「白銀」という品種も、もともと北海道に自生していたコオニユリから品種改良されたものです。
■ゆり根が縁起ものとされる理由
ゆり根の形は、鱗茎が花びらのように重なり合っています。そのため「年を重ねる(長寿)」「和合(仲の良いこと)」に通じる縁起の良い食材とされています。さらに、たくさんのりん片を子宝に見立て「子孫繁栄」、薬効に優れているといわれているので「無病息災」など、人々の願いを込めて、正月料理や懐石料理など祝いの膳によく使われる食材です。
■ゆり根の選び方と下ごしらえ
ゆり根は、12月から2月が旬です。選ぶときは、色が白く、鱗片にハリがあり、硬く締まっていて、根が長く伸びていないものを選びましょう。紫がかった部分は苦い場合があるので、紫や黒ずみがないもののほうが良いでしょう。
ゆり根は乾燥に弱く、傷つきやすいので、おがくずなどが一緒に入っていると安心です。
・ゆり根の下ごしらえ
まず、丸のまま水洗いします。外側にサビや傷があればピーラーなどで取り除きます。外側からりん片を一枚ずつはがして、水を入れたボウルに放します。芯の部分が見えるまではがしたら、根を包丁で切り落とし、芯の部分まで全部はがします。はがしたりん片を水で洗っておがくずや土を落とします。
きれいに洗ったゆり根は、塩少々を加えた熱湯でさっとゆでて、水気を切り、小分けにして冷凍保存しておくと約1か月保存可能です。使うときは解凍しないで冷凍のまま調理します。
■ゆり根の簡単でおいしい食べ方
ゆり根といえば茶碗蒸しやあえ物などの和食のイメージが強いかもしれませんが、実は中華風や洋風の揚げ物や炒め物のほか、スイーツなどにも使える優れものです。
また、ゆり根はビタミン・ミネラル類が豊富で、特にカリウムは野菜の中でトップクラス。妊娠中の女性に大切な葉酸や、整腸作用のある食物繊維も豊富。加熱によるビタミンC の損失が少ないという特徴もあります。活用しない手はないですね。
普段から作りやすい簡単料理をご紹介します。
・ゆり根のスパゲティ
スパゲティを茹でるとき、茹であがり間近にゆり根もいれて一緒に茹でます。茹で上がったら一緒に鍋から上げて、お好みのパスタソースと絡めて出来上がりです。シンプルなペペロンチーノなどでも良いですし、ほっこりしたゆり根の触感はカルボナーラのようなクリーム系のパスタにも良く合います。
・ゆり根のベーコン炒め
炒め物なら、ゆり根を下茹でしなくても大丈夫。シャキシャキとした食感が楽しめます。
フライパンにオリーブオイルとにんにく、ベーコンを入れて炒め、軽く焦げ目がついたらゆり根を加えて炒めます。塩コショウで味を調えて出来上がり。
・ゆり根のマッシュ
柔らかくゆでてつぶしたゆり根をポテトサラダのようにして食べてもおいしいです。ハムなどの具材を混ぜて、衣をつけてあげればゆり根コロッケに。
裏ごしして甘く仕上げてゆり根のあんを作り、縁起物のゆり根を正月料理のきんとん作りに使うのもおすすめです。
2024年11月22日