2018年05月26日

枇杷

初夏の訪れとともに店頭に並び始める枇杷(びわ)。手でスルスルと皮をむくと、やわらかな果肉があらわれ、食べると上品な香りと甘みが口いっぱいに広がります。ハウス栽培のものは春ごろから出てきますが、露地ものは5月から6月の限られた期間だけ味わえる、季節感のある果物です。

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■初夏の爽やかな果物「枇杷」
枇杷はバラ科の落葉樹で、剪定しないと5m以上の大木になります。冬に小さな花を咲かせ、初夏に美しい実をつけます。
枇杷は中国原産で、実は紀元前から食べられていました。後に中国から種が流れ着き、日本にも野生の枇杷の自生地ができ、日本の在来種といわれるようになりました。この枇杷は丸くて小粒で、日本各地に広まり改良されましたが、大きい枇杷にはなりませんでした。現在栽培されているのは中国から輸入された「唐びわ」を改良したものです。
江戸時代、唯一の貿易港であった長崎で、輸入された枇杷の実から種を取り、栽培されたのが「茂木びわ」です。現在、「茂木びわ」の生産地である長崎県と、「房州びわ」の生産地、千葉県富浦市が日本最大の産地となっています。枇杷は寒冷地での栽培には向かないため、関東以西に栽培地が多くあります。

■名前の由来
「枇杷」は、果実の形が楽器の「琵琶(びわ)」に似ていることに由来します。
中国の語学書『釈名』に、「推手前日批、引手却日把」(手を推し進むを批といい、手を引き却くを把という)とあり、ビワの語源は弦を弾くときの演奏方法にあると述べられています。当初、楽器のビワは手偏で「批把」と書かれていましたが、楽器を表すので「琴」と同じ冠にして「琵琶」となり、樹木のビワは木偏の「枇杷」になったといわれています。

■枇杷の品種
【茂木】栽培地:長崎県・鹿児島県・香川県など
江戸時代、長崎の代官所で働いていた女性が、中国船から持ち込まれた大粒の枇杷を茂木の家に持ち帰って植えたのが今の枇杷栽培の始まりといわれています。実の大きさは50g程度とやや小ぶりですが、甘みが強く酸味が控えめな味で人気の品種です。

【田中】栽培地:千葉県房総半島・愛媛県・香川県・兵庫県など
明治時代、植物学者の田中芳男氏が長崎で食べた枇杷の味に魅せられ、種を持ち帰り、東京・本郷の自宅に植えたのが始まりで、冬でも温暖な房総半島での栽培を奨励しました。大粒で甘みも酸味も強い品種です。

【長崎早生】
「茂木」と極早生種の「本田早生」を交配してつくられました。寒さに弱いためにハウス栽培され、露地物より2か月ほど早く出回ります。

この他に早生系の「楠」、田中と楠を交配した「瑞穂」、茂木と田中を交配した「戸越」「九十九」などの種類があります。
また、土肥温泉で知られる静岡県土肥地域では、唯一白い果肉の「土肥枇杷」が栽培されています。小粒ですが、果肉がとてもやわらかく美味しい枇杷です。

■枇杷を選ぶときのポイント
枇杷を選ぶ時は、3つのポイントに気をつけて新鮮なものを選びましょう。
① ヘタがしっかりしていて形がいびつでない
② 果皮に張りがあって色も鮮やか
③ うぶ毛と白い粉(ブルーム)が残っている

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枇杷は冷蔵庫で長時間冷やすと固くなるので常温で保存しますが、常温で置いておいても追熟はしないので、早めに食べるのがおすすめ。冷たくして食べたいときは食べる2時間位前に冷やすと良いでしょう。傷みやすいので押したりしないよう注意してください。

■簡単な枇杷のむき方
枇杷は生のまま食べるのが一番おいしいもの。水で軽く洗ったら、枇杷の下の方から上の軸に向って皮をむくと、手でもきれいにむくことができます。皮をむいた後、すぐに食べないときは、レモン水(または水や塩水)に浸して変色を防ぎましょう。
枇杷は種が大きいので、食べるところが少なく感じるかもしれませんが、意外に可食部が多く、大玉だと食べ応えもあります。

■食べきれないときはコンポートなどに
生食の他、コンポート(シロップ煮)にして楽しむのもおすすめです。
【コンポートの作り方】
① 枇杷を縦半分にカットし、種と皮を取り除いたら、変色しないよう水に浸けておく。
② 水とグラニュー糖を鍋でひと煮してシロップをつくる。
③ ②のシロップに①の枇杷とレモン汁を入れて2~5分煮る。
④ 粗熱をとったらシロップごと保存容器に入れて冷蔵庫へ。
シロップの量は、枇杷を鍋に入れたときにシロップがひたひたになるくらいが目安。グラニュー糖の量は好みの甘さで調節してください。

■枇杷の栄養

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枇杷の果肉のオレンジ色は、抗酸化作用のあるカロテノイドという色素によるもので、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなどが含まれています。β-カロテンは、体内でビタミンAに変わり、粘膜などを守って抵抗力を高める働きがあり、β-クリプトキサンチンは、骨粗しょう症の予防に効果があるといわれています。他にも、抗酸化作用が期待できるポリフェノール一種であるクロロゲン酸なども含まれています。皮をむくと茶色く変色してしまうのは、このポリフェノールのためです。
また、枇杷は古くから果実だけでなく葉も薬として利用され、乾燥した枇杷の葉を煎じる枇杷茶は、免疫力を高める健康茶として飲まれていました。

■「桃栗三年柿八年、枇杷(は早くて)十三年」
「桃栗三年柿八年」ということわざがあります。「何事にも結果を出すには一朝一夕にはいかない。努力を続けることが大切」というような意味で使われますね。
これに続く文言も様々ありますが、「桃栗三年柿八年、枇杷(は早くて)十三年」というのもあります。実際には13年はかからないかもしれませんし、地域によっても違いがあると思いますが、枇杷が種から成長して実をつけるまでには10年ほどの年月がかかるようです。
努力を惜しむわけではありませんが、枇杷の実を楽しみたいなら大きめの苗木で植えたほうが良さそうです。

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