夏になると桃がたくさん出回ります。甘くてみずみずしい桃を食べると、蒸し暑さも多少はしのげる気がします。桃の旬は6月から9月頃まで。旬の短い果物なので、ぜひこの時期に味わいたいものです。また、桃はただ美味しいだけでなく、邪気を払う力がある果実として尊ばれてきました。
■桃は神秘のパワーを秘めている!?
桃の原産地は中国で、花や実は邪気を祓い、福を招くとされています。
中国の伝説では、桃は不老長寿の果物であり、仙人の果物「仙果(せんか)」と考えられていました。「西遊記」に出てくる孫悟空は、3000年に1度しか実らない大切な仙果を食べてしまい、山に閉じ込められてしまいました。その後、三蔵法師に救われて旅のお供をするという物語はよく知られていますね。ちなみにこの桃は「蟠桃(ばんとう)」という平べったい形をした桃です。
また、理想郷(ユートピア)を表す「桃源郷」という言葉は、中国の「桃花源記」という戦争のない理想の国を描いた物語から生まれました。桃は邪気払いや不老長寿、平和の象徴だったのです。
■桃にまつわる日本の文化
日本では縄文時代の遺跡から桃の種子が見つかっており、大変古くから渡来していたことがわかります。
日本でも桃は邪気を払う果物として「古事記」や「日本書記」に記載があります。
イザナギノミコトが亡き妻イザナミノミコトを黄泉の国から連れ戻そうとしますが、見てはいけないという約束を破って死んだ妻を見てしまい、その姿に驚いて逃げだすと鬼女や雷神たちが追いかけてきます。必死で鬼女をかわしながら逃げ、黄泉の国と現世の境に生えていた桃の木から実を3個取って投げつけると、雷神たちは黄泉の国に帰って行きました。助かったイザナギノミコトは、桃に「意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)」の名前を授け、苦しむ人々を助けるように命じたということです。
桃といえば「桃太郎」が思い浮かびますが、鬼を恐れさせる桃太郎はやはり桃の化身なのかもしれません。なお、今は桃太郎は桃から生まれたというのが一般的ですが、桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返って子どもが生まれたという解釈もあります。
また、ひな祭りは「桃の節供」ともいい、女の子の幸せを願う行事として現代にも根付いています。
■桃の主な種類
現在、私たちが食べている桃は、中国や欧米から入ってきた品種を日本の気候に合うように改良したもので、果肉が白い白桃系と、果肉が黄色い黄桃系に分けられます。
日本の桃の元祖といわれる「白桃」は明治34年に岡山で誕生した品種です。その後「白鳳(はくほう)」「あかつき」「川中島白桃」など代表的な品種が次々と誕生しました。白桃系は大玉で柔らかくジューシーで、生食に適しています。
黄桃系は果肉が固めで缶詰などに利用されることが多いのですが、「黄金桃」という品種は白桃に近い濃厚な味です。
中国原産で孫悟空が食べたという「蟠桃」は、見かけることが少なくちょっと珍しい桃です。
■桃の選び方のポイント
見た目でわかりやすいポイントは2点です。
①左右対称で丸く形が整ったもの。
②赤い桃は赤い色が鮮やかなもの。軸のまわりが緑っぽいものは未熟な桃です。
見た目にプラスして香りも重要なポイントです。桃は熟してくると甘い香りがしてきます。
■桃の食べごろと保存方法
桃は軽く触って柔らかくなっているものが食べごろです。桃を傷めずに柔らかさを確かめるには、手のひらで包むように桃を持って、ヘタの近くを指の腹でやさしく触ってみましょう。弾力が感じられれば食べごろです。
桃は収穫後も追熟するので、固いときは、新聞紙などで包んでから乾燥しないようにポリ袋に入れ、涼しい場所に置いておきます。
熟した桃は日持ちしないので、早めに食べましょう。冷蔵庫で冷やしすぎると甘みが減ってしまいます。食べる2~3時間前に冷蔵庫の野菜室で冷やすのがおすすめです。
また、食べきれないときなどは冷凍保存ができます。皮をむいて食べやすいように切ってから、ラップで包み冷凍用保存袋に入れて冷凍保存します。変色が気になる場合は、レモン汁をかけておくと良いでしょう。保存期間は1か月以内が目安。半解凍でシャーベット風に食べたり、スムージーなどにしたりするのがおすすめです。
2021年08月16日