夏は暑さを紛らわすためについ、冷たい飲み物ばかり飲んでしまいがちですが、それでは身体によくありません。そんな時は、旬の夏野菜で栄養を摂り、元気を取り戻しましょう。
かぼちゃ
かぼちゃの原産地は諸説ありますが、中南米という説が有力。16世紀中頃にカンボジアに寄港したポルトガル船が日本にかぼちゃを持ち込み、「カンボジア」がなまって「かぼちゃ」になったといわれています。このとき持ち込まれた品種が、今でいう「日本かぼちゃ」で、江戸時代末期に「西洋かぼちゃ」が導入されました。
精進料理の夏メニューなどにもよく使われるかぼちゃ。β-カロチン、ビタミンC・E、食物繊維、カリウムなど、かぼちゃには多くの栄養素が含まれています。特に皮や皮に近い部分やわたに豊富に含まれていますから、料理するときは、その部分をなるべく捨てないで使うようにしたいもの。β-カロチンは、油で調理すると吸収力がアップします。
また、種もカルシウムなどのミネラル、タンパク質、ビタミンB1・B2、鉄分、ナイアシンなど栄養がたっぷり。食べやすくローストされた種も売っています。カロリーが高いので食べ過ぎは禁物ですが、夏バテ防止に利用してみるものよいでしょう。
なす
なすの原産地はインドといわれており、日本での栽培の記録は奈良時代までさかのぼります。
なすの成分の約94%は水分で、栄養価やカロリーの点では特に多い方ではありませんが、食物繊維やカリウムなどのミネラル、皮の紫色の色素「アントシアニン」、抗酸化成分の「ポリフェノール」などを多く含み、からだの調子を整える作用があります。 また、体を冷やす作用があるので暑い夏には嬉しい食材です。かぼちゃと同様、夏の野菜メニューとして多く使われますが、煮物にする時でも、先に揚げておくときれいな色が保てて、栄養分が逃げにくいそうです。
なすの中でも、生食できるのが「水なす」で、アクが少なく浅漬けはもちろんサラダなどにも使えます。大阪泉州の特産品として有名で、手で裂くと中からジュワーっと水分が湧き出てきます。
トマト
トマトの故郷は、南米ペルーを中心としたアンデス高原にあった野生種のトマトが、人間や鳥によってメキシコに運ばれ、栽培され食用になったと考えられています。その後、コロンブスによってヨーロッパに持ち帰られましたが、その真っ赤な色や匂いから有毒植物と信じられ、トマトは観賞用のものでした。ヨーロッパで最初にトマトを食べたのは飢饉に苦しんだイタリア人。それで、トマトは食べられるとわかり、今ではイタリア料理の素材の代表格です。日本に伝わったのは17世紀なかばで、最初はヨーロッパ同様、観賞用として珍重されていました。食用になったのは明治以降、西洋野菜とともにあらためてヨーロッパやアメリカから導入されてからのことです。
トマトの栄養で注目したいのは赤い色に含まれるリコピン。リコピンの抗酸化作用は、β-カロチンの2倍、ビタミンEの100倍以上です。この抗酸化作用の働きで、生活習慣病などの疾病予防に役立つといわれています。そして完熟するほどリコピンは増え、美容にもよいそうです。
また、トマトはうまみ成分であるグルタミン酸、アスパラギン酸の宝庫。南欧州の地中海沿岸地方では、18世紀頃からトマトが料理のベース。トマトソースが日本のだしと同じ役割をしています。日本ではさっぱりとサラダなどで食べることが多いトマトですが、南ヨーロッパでは炒めたり、煮込んだりするトマト料理が多いのは、そういう理由があったのです。
ゴーヤ(にがうり)
沖縄料理のゴーヤチャンプルーでお馴染みのゴーヤ。原産地はインドを中心とするアジア熱帯地域です。日本には中国経由で慶長年間に伝わり、沖縄には琉球王国時代には伝わっていたようです。18世紀初頭にはすでに野菜として食べられていました。
沖縄には、「クスイムン(薬物)」「ヌチグスイ(命薬)」と表現される「医食同源」の考え方があり、毎日の食事は健康を維持するための薬でもありました。そこで、栄養豊富なゴーヤもただの野菜としてではなく、夏バテ予防のためにも食べられてきたのです。
ゴーヤは暑さに強く、ビタミンC、カリウムが豊富。特にビタミンCはトマトの5~6倍も含まれています。ゴーヤのビタミンCは加熱してもほとんど消失しないので、炒めて食べるゴーヤチャンプルーもおすすめ料理です。ゴーヤの苦味が苦手な人は、水に晒したり、塩もみしたり、下茹でしたりして苦味を和らげてから使うと食べやすくなるようです。