9月9日は重陽の節供。菊を用いて長寿を願うため、菊の節供とも呼ばれています。 菊といえば晩秋の花という印象ですが、旧暦の9月9日は今の10月中ごろにあたり、重陽の節供はまさに菊の美しい季節でした。旧暦が新暦に替わって季節感が合わなくなり、次第に廃れてきましたが、寿命を延ばすと信じられていた菊を使って、いろいろな風習が伝えられています。
※重陽の節供の由来についてはこちらをご覧ください。 → 重陽
日本では平安時代に宮中行事として取り入れられて以来、現代でも菊を楽しむさまざまな風習が残っています。菊は種類も多く、利用の仕方もさまざまで、私達の生活に深く関わっている花といえるでしょう。
菊で健康、長寿を願う
菊の被綿(きせわた)
重陽の節供では、前日に菊の花に綿をかぶせておき、菊の夜露を含んだ綿で肌を拭いて、長寿祈願をしていました。そんな風情を楽しむように、菊に薄い綿をかぶせてベールのようにアレンジし、お部屋に飾ってみても素敵でしょう。
菊湯・菊枕
湯船に菊を浮かべた菊湯に浸かったり、菊を入れた菊枕で眠る風習で、血行促進や心地良い眠りを誘う効果があります。現在でも、ハーブバスやアロマテラピーに菊が用いられています。
菊は昔からのエディブルフラワー(食べられる花)
菊にはたくさんの品種があり、食用菊と観賞用菊はそもそも違う種類です。古くから菊を漢方に用いていましたが、江戸時代に菊の花弁を食べるようになり、苦味の少ない「阿房宮」(あぼうきゅう)などの品種がうまれました。
食用菊を使ったおひたしやサラダが親しまれていますし、お刺身の盛りつけでお馴染みの黄色い菊は、見た目の美しさだけでなく、優れた抗菌作用で食中毒を防ぐ役割もあります。
菊の産地、山形では独特の風味とおいしさ、美しさから、「食用菊の王様」と呼ばれている食用菊があります。その名前は「もってのほか」。この一風変わった名前の由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」「もってのほか(思っていたより)おいしい」...というところからついたとか。「もってのほか」は「延命楽」という品種で、菊と長寿との関係がうかがえます。
菊花茶
白や黄色の菊の花から作るお茶で、中国産が有名です。お湯をさして飲むだけで、疲れ目や熱にも効くそう。さわやかな香りのティータイムでリラックス効果もあります。
菊酒
本格的には菊をお酒に漬け込んで作ります。密封瓶に菊の花びらとその10倍の量のホワイトリカーを入れ、好みの量の砂糖を加えると、ひと月ぐらいで飲み頃になります。 また、日本酒の上に菊の花びらを浮かべて、香りを楽しみながらいただくのも乙なもの。早速、晩酌に取り入れて、風流な気分を味わってみてはいかがですか。
菊の鑑賞方法はいろいろ
「和菊」を楽しむ
桜と並んで、日本の国花とされる菊。日本で発達した「和菊」の愛好家も多く、10月ともなると全国で菊人形、菊祭り、菊花展など、菊のイベントも目白押しです。懸崖(けんがい)作りや大菊などの他、人形の衣装を菊で表現した菊人形などの細工ものも人気があります。
「洋菊」をガーデニングで楽しむ
菊というと伝統的な生け花や大輪の一本菊を思い浮かべてしまいますが、スプレーマムやピンポンマムなど、「~マム」というネーミングで人気のお花はすべて、西洋で品種改良された「洋菊」です。洋菊は育てやすいものが多いので、ガーデニングで楽しむのもおすすめです。
アレンジフラワーで楽しむ
アイデアを活かして「和菊」「洋菊」を素敵にアレンジ。菊の茎や葉っぱを取り除くと、和風の菊でもモダンなイメージになります。塗りのおわんや和食器に浮かべれば、ジャパニーズ・モダン。ガラスの食器に浮かべれば、爽やかなフラワーアレンジに。和室だけではなく、洋室にも合う素敵なアレンジです。
伝統の行事から今風のいろいろな楽しみ方まで、菊の楽しみ方はいろいろ。
自分流の菊の楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょう?