世界中の美味しい料理が日本に居ながらにして味わえる現代ですが、ごはんとみそ汁をほとんど食べないという人は少ないのではないでしょうか。ごはんとみそ汁、おかずが1,2品と漬物などから構成されるのが「一汁三菜」で、和食の基本とされ、この形ができ上がったのは江戸時代といわれます。「和食」は、旬の素材の味を生かしたおいしさだけでなく、一汁三菜を基本にしたバランスのよい食事スタイルなのです。一汁三菜から和食の特徴を見直してみましょう。
■一汁三菜の中心は「ごはん」
「ごはん」とは、米を炊いたごはんの意味ですが、「朝ごはん食べた?」などのように食事全般を示す意味もありますね。米は和食の根幹ともいえるでしょう。
米=稲は本来日本には自生していない熱帯性植物で、日本に水田耕作が伝わったのは縄文時代後期といわれます。もちろん今、私たちが食べている米とはずいぶん違うものですが、日本の気候が水田耕作に適していたことや、米が他の作物に比べて糖質、たんぱく質、脂質も含む高栄養食材だったことなどから、瞬く間に日本中に広がっていきました。
今、私たちが食べている米は、長い時間をかけて研究され続けてきた品種改良の賜です。白飯は味がしないと思っている方も多いと思いますが、よく噛んで食べると甘みが口の中に広がってきます。味がないような味なので、様々な味付けのおかずともよく合うのです。
おいしいごはんの炊き方はこちらをご覧ください。
【旬の味覚と行事食】秋/新米
■発酵食品「みそ」と「だし汁」の合わせ技「みそ汁」
平安時代に、大豆を発酵させたものを「未醤(みしょう)」と言ったのが「みそ」の語源です。鎌倉時代に、「未醤」をつぶしてだしと合わせたみそ汁が誕生し、室町時代には大豆の生産量が上がり、農民も自家製みそを作るようになり、みそ汁が普及しました。
江戸時代には、だしとともに作るみそ汁が日常の食事に欠かせないものとなりました。
発酵食品であるみそは、気候風土や環境など様々な条件によって違いが出ます。詳しくはこちらもご覧ください。
【旬の味覚と行事食】冬/みその基礎知識
みそ汁づくりに欠かせないのが「だし汁」。和食の大きな特徴のひとつが、「だし」によるうまみです。甘味・酸味・塩味・苦味とともにうまみが基本の五味といわれ、国際的にも" umami"として認知されています。おいしい和食の基本はだしにあるといってもよいでしょう。「うまみ」「だし」についてはこちらをご覧ください。
【旬の味覚と行事食】秋/だしの話
■日本の自然と肉食禁忌が生んだ魚食
重要なたんぱく源として、肉、魚、大豆などがありますが、日本では7世紀ごろから何度も肉食禁止令が出され、世界でもまれな肉を排除した食文化が生まれました。肉を排除したことから、伝統的な和食では「魚」を中心にしてきたのです。
日本列島のまわりには際立って多くの魚類が生息し、その数4500種類近くといわれます。同じ島国でもイギリスは300種類、ニュージーランドでも1300種類ほどだそうです。
四季を通じて多種多様な新鮮な魚が手に入れば、刺身や寿司のような、さばくだけのシンプルな料理が誕生したのもうなずけます。
■世界中からきて和食を支える野菜
いつも私たちが食べている野菜は、原産地が外国というものがほとんどです。
例えば、サラダによく使われる野菜の原産地と伝来時期を見てみましょう。
ヨーロッパ原産のものでは、キャベツが江戸中期、カリフラワーが明治時代、ブロッコリーは少し遅れて大正から昭和にかけて。玉ねぎはイラン~パキスタン原産ですが日本には江戸時代にヨーロッパから伝えられました。トマトは南米から江戸時代に伝えられました。
また、縄文時代から弥生時代、古墳時代に伝えられたとされるのは、大豆、こんにゃく、小豆、稲、ごま、生姜、だいこん、かぶ、はす、冬瓜など。今でも和食を支える大切な食材ですね。
■未来に広がる和食の世界
一汁三菜をもとに、「和食」の特徴を簡単にご紹介しましたが、ラーメンやカレーもいまや立派な「和食」とみなせますし、世界中の料理のよいところを吸収して、新しい和食がどんどん生み出されていくのもおもしろいですね。
また、おせち料理に代表されるように、季節の行事や、節目節目に伝統的な行事食があるのも「和食文化」の素晴らしいところです。
和食は長い歴史の変遷を経て、今の形を形成してきました。未来の和食も楽しみですね。
参考:特別展「和食~日本の自然、人々の知恵~」公式ガイドブック
2023年11月23日