かき氷

真夏の日差しが照りつける中、「氷」と書いたのぼりをみるとちょっと涼しさを感じます。冷たいかき氷を食べて一休み.・・・夏ならではの楽しみです。

「かき氷」は日本の夏の風物詩、夏の季語で「夏氷」(なつごおり)ともいいます。

かき氷(旗)イメージ

実はこのかき氷、冷凍庫がある現代だけの食べものではありません。

昔の人も、暑い季節にかき氷を食べて涼をとるのが大好きでした。

冷凍庫のない時代、どうやって真夏にかき氷を楽しんでいたのでしょうか。

天然氷を氷室(ひむろ)で保管

昔は、製氷技術はなかったので、冬の間、池で凍った氷を切り出し、それをなるべく溶かさないように貯蔵しました。山の麓の穴蔵や、洞窟の奥などを利用してそこに大量に氷を入れて冷却効果を高め、さらに断熱効果を高めるためにおがくずなどをかけて保存しました。この貯蔵場所を氷室と呼びます。

朝廷や貴族が愛した氷

氷室については、『日本書紀』にこんな話が書かれています。

額田大中彦皇子(ぬかたのおおなかつひこのみこ)が、闘鶏(つげ=現在の奈良県)へ狩りに出かけたとき、氷室を発見。皇子は氷室所有者だった豪族に保存の方法や使い方を聞き、その氷を宮中に献上したところ、天皇は大いに喜ばれたそうです。それから蔵氷(ぞうひょう)と賜氷(しひょう)という制度ができ、朝廷のために氷室を管理する要職が設けられるようになりました。

また、清少納言の『枕草子』「あてなるもの」(上品なもの、よいもの)の段には、「削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる」と記述されています。意味は「削り氷にシロップのように蔓草の一種である甘葛(あまかづら・あまづら)の汁をかけて、新しい金属の器に入れてあるのが実に優雅です」。平安貴族が、涼やかなかき氷を楽しんでいた様子が伺えます。

かき氷の発展

近年になると、製氷技術の発達とともに、かき氷が広がっていきました。

・1869年(明治2年)、神奈川県横浜にある馬車道で初めての氷水店が開店。日本でアイスクリームを発祥させた店でもあります。

・1871年(明治4年)、五稜郭の外濠で生産した天然氷が「函館氷」と銘打って京浜市場に登場。高価な輸入氷に比べ、安くて良質な国産天然氷の商品化に成功し、人気を得ました。

・1878年(明治11年)、粗悪な氷が販売される事を取り締まるために内務省から「氷製造人並販売人取締規則」が公布されました。これにより営業者は、衛生検査に合格した氷の生産地・販売者名を示したのぼりや看板を掲げる事が義務づけられました。

・1887年(明治20年)、氷削機(ひょうさくき)が発明され、氷も機械による製氷が主流となりました。

・昭和初期に氷削機が普及し、かき氷が一般化していきました。

かき氷の種類

第二次世界大戦前は、かき氷といえば、削った氷に砂糖をふりかけた「雪」か、砂糖蜜をかけた「みぞれ」、小豆餡をのせた「金時」などが定番のメニューでした。かき氷専用のシロップが販売されるようになったのは、戦後のことです。

かき氷イメージ

かき氷専用のシロップは「氷蜜(こおりみつ)」と呼ばれ、イチゴやレモン風味などさまざまな種類があります。また、砂糖水を略して水(すい)といい、「氷水」・「みぞれ」・「せんじ」・「甘露」とも呼ばれています。同一のものであっても、地域によって呼び名や盛りつけ方が異なりますし、地方によってユニークなかき氷があります。

宇治金時: 抹茶に砂糖と水を加え、茶筅で泡立てたシロップをかき氷にかけ、小豆を載せたもの。宇治が抹茶、金時は小豆のこと。また、ミルクをかけた「ミルク金時」もあります。

氷あずき: 水のシロップに小豆をのせたもの。

酢だまり氷: 山形県山辺町周辺に伝わる酢醤油をかけたかき氷。イチゴシロップなどといっしょに酢醤油がかかっています。戦後、シロップなどが手に入らず、ところてんにかけられていた酢醤油をかけたのが始まりとされています。

赤福氷: 伊勢路の夏の風物詩の一つ。かき氷に赤福の餡と餅を入れて、抹茶仕立てのシロップをかけたもの。ほうじ茶が添えられます。

白くま: 発祥は鹿児島県で九州の名物氷菓です。かき氷にミカンやパイナップルの缶詰などの果物を盛り込み、小豆をのせ、練乳をかけたもの。カップ入りの氷菓やアイスキャンディーもあります。

ぜんざい: 沖縄県の名物氷菓。小豆や金時豆を甘く煮て冷やし、その上にかき氷をかけます。

雪くま: 夏の猛暑で知られている埼玉県熊谷市が、暑さを元気に乗り切れるようにとブランド化したかき氷。地元のおいしい水を使った氷で、雪のようにふんわりした食感に削り、オリジナルのシロップや食材を使っていることが条件だそうです。

コバルトアイス: 熊本県の蜂楽饅頭が出しているかき氷。国産蜂蜜を使った自家製シロップに練乳ミルクをミックスして涼しげなコバルトブルーに色付けしたもの。

みかん氷・パイナップル氷: 横浜スタジアムで売られているかき氷。缶詰みかんや缶詰パイナップルをのせ、その上に 缶詰のシロップをかけただけのシンプルなもの。

こうしてみると、色々なかき氷がありますね。甲子園球場名物の「かち割り」のように氷を細かく砕いたものもかき氷と呼ぶそうです。どれもおいしそうですが、食べ過ぎてお腹を冷やさないよう、注意しましょう。

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